トーゴは、西アフリカにある人口800万人程度で、国土がデンマークほどしかないアフリカの小国です。一人当たりGDPは$617(世界銀行, 2017)と、隣国のガーナの半分程度、フィリピンの1/5程度しか無い非常に貧しい国で、実際に首都ロメでさえ人々の暮らしは厳しいものです。現地には日本大使館やJICAの事務所が無く、日本企業の進出もほとんど無い、日本とは縁遠い国とも言えます。しかし今、日本とは縁遠いトーゴで若手社会起業家たちが作ったカカオ豆が、日本全国の小売店で販売されることで、カカオ農家の生活を変えようとしています。
甘くないトーゴのカカオ産業
皆さんは、カカオといえばガーナを思い浮かべるのではないでしょうか?トーゴのカカオ生産量は年間約2万トン程度で、隣国のガーナ(88万トン)やコートジボワール(203万トン)と比べるとカカオ生産においては小国です。(FAO, 2017)日本への輸出は、恐らく弊社・BMP Japanがファシリテートしている物のみだと思います。
トーゴのカカオ産業は、品質で他国と差別化できておらず、かといってガーナやコートジボワールと比べ生産コストが安いわけではなく価格競争に勝てないため、世界のカカオ市場で難しいポジションにあります。品質の差別化を難しくしている理由のひとつに、カカオの品質を決める味は、品種によって大きく異なる事実にあります。トーゴで生産されている品種は、世界供給の約60%を生産するガーナやコートジボワールと同じフォラステロ種であり、発酵方法や乾燥工程の管理で品質向上は見込めるものの、大きく品質で差別化を図ることができていません。
チョコトーゴとの出会い・トーゴ初訪問
私たちがトーゴのカカオと出会ったのは、2016年にイタリア・トリノで開かれたスローフードの展示会でした。そこで出向いた展示会のセミナー室で、トーゴのカカオについてプレゼンする、チョコトーゴというトーゴのソーシャルビジネスの共同創業者である、デリアがいました。彼女は、トーゴのカカオが、より農家に優しく、そして農村地域で雇用創出ができる産業になるために行っている事業について話しており、すぐに、その事業へ何らかしらの貢献をしたいと思い立ち、2016年11月に初めてトーゴを訪れました。それから、2017年と2018年にも訪問しながら、チョコトーゴや他のソーシャルビジネスのサポートをしています。
カカオ生豆を加工することで付加価値を付け、農家に還元。加工工程で40名の雇用を創出
チョコトーゴのソーシャルビジネスは、他国のカカオとの差別化を図りながら価格競争から抜け出すだけでなく、農家がカカオを生産することでより多くの収入を得ることを可能にし、農村で、さもなければ生まれなかった雇用を創出しています。
チョコトーゴが輸出する商品の特筆すべき点は、カカオを生豆として輸出するのではなく、焙煎豆やチョコレートへ加工してから輸出することで、価格競争から脱し、また差別化を図ろうとしています。さらに、カカオの焙煎や豆皮を剥く工程を農村地域で行うことで、雇用がほとんど無い村で40名以上の人々を雇用することができています。「事業をするために借りたお金が、事業に失敗したせいで返せずに困っていました。そんな時に、チョコトーゴで仕事を貰えたおかげで、今は借金を完済し、家の改修工事を行うこともできています。」と、カカオ豆を剥く担当の女性が私に話してくれました。このような女性が40名以上もいることを考えると、チョコトーゴのこれまでの功績は大きなものです。
チョコトーゴのカカオ豆が、日本のコンビニに!
BMP Japanはこれまで、トーゴ国外へのセールス&マーケティングと、加工工程における品質の均一化や食品衛生基準作りなどを協働で取り組んできました。シンプルに、より多くのカカオ豆が売れればより多くの農家から調達することが可能になり、より多くの農家が貧困から脱することを期待しているためです。そして、長期的にお付き合い頂けるお客様を見つけるためには、長期的に安定した品質の商品を訪けできるキャパシティを整えることが大前提であるため、品質保証にも、リモートですが継続的にコミットしています。
日本では、2年ほど前に200kgの焙煎された手剥きカカオニブをテスト販売することから始まりましたが、様々な方々の支えがあり、2018年の暮れからコンビニでも取り扱われるようになりました。
チョコトーゴのカカオ豆をより多くの方々へ。ソーシャルインパクトを増大する!
チョコトーゴと今後取り組んでいきたいこととしては、オペレーションを最適化しコストを下げることで、産地で誰も無理することなく、手剥きカカオニブをより多くの方が買い易い価格にすることです。ソーシャルビジネスやフェアトレードというとコスト意識が薄れがちですが、ロジスティックスや資材調達の効率化によりコストを下げる可能性があると考えています。
また、今後は日本以外にも、すでに弊社のコーヒーで取引があるヨーロッパの顧客への販売にも力を入れることで、より多くの農家からカカオ豆を調達できることを目指していきます。
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